月夜に笑った悪魔
「……ごめん」
ぱっと手を離して、下を向く。
無理をさせたらだめ。
……暁でも、ワガママを言いすぎたらだめ。
「……いーよ。女王様の頼みなら、乗ってやるよ」
ドサッと私の隣に座って、車のドアが閉められる。
ぱっと隣を見れば、暁はいた。
確かに、いる。
私が『離れないで』って言ったんだけど……いいの、かな。
「……だ、大丈夫?」
「この間乗ったから行けんだろ。乗ったって言ってもあの時の俺の意識はあんまなかったけど」
彼は軽く笑うと私の手を強く握ってくれる。
「……寒いから、もっとくっついてもいい?」
手を握るの嬉しいけれど。
やっぱり、まだ寒い。
だからちらりと彼を見てみると。
「来いよ」
握った手は一瞬にして離れ、肩にまわる手。
ぐいっと引き寄せられ、密着する体。
私は彼に寄りかからせてもらって、くっついていた。