月夜に笑った悪魔
……私だけ車で送ってもらうのは、さすがに悪い。
そう思ったが、断ることができなかった。
私は、この家と学校がどれくらい離れているのかも、この家から学校までの道もまったく知らないから。
スマホもないし、道を調べることもできないから乗るしかない。
「ありがとうございます」
ぺこりと頭を下げてから乗車。
車内は綺麗で、広くて、1人で乗るには贅沢すぎる。
窓の外からは暁の姿が見えて、ヘルメットを被るとすぐにバイクを走らせて行ってしまった。
そのあとに、車も走り出す。
……暁も車で行けばいいのに。
同じ学校なら一緒に行けばよくない?
っていうか、同じ学校なら暁は、前から私のこと知ってたってこと?
だったら、私のあの噂も知ってるんじゃ……。
学校での私、それはもう評判がとにかく悪い。
“あの噂”というのは、私が『援交をしている』という噂のこと。
もちろん、そんなことはしていない。
私が年上と付き合っていたから、当時の友だちが変に怪しんで誤解してしまって……。
『和正は本当に彼氏だよ』『怪しくないよ』と言っても信じてもらえずケンカになり、変な噂を広められてしまっただけ。