月夜に笑った悪魔
私は後ろをくるりと向いて、暁から目を逸らし。
無言で自分の部屋へと行こうとした、けれど。
パシッと手をつかまれ、引きとめられた。
それから後ろから無遠慮におでこに触れる手。
数秒触れたあとに、「熱はもうなさそうだな」と彼はつぶやく。
「……やだっ」
おでこに触れている彼の手。
その手を、私は振り払う。
看病してくれたお礼として『ありがとう』って言いたかった。
帰ってきて今会えたことが嬉しかった、はずなのに……。
暁といるとやっぱり苦しい。
復讐を望んでいる彼の近くにいると、苦しくて胸が締めつけられる。
私はすぐに部屋へと逃げようとするが、手を離してもらえず。
ぐいっと強い力で引っ張られて隣の部屋へと強引に連れていかれた。