月夜に笑った悪魔
味方なら組長の子どもなんて丁寧に扱うものだし、月城組なら私だけ拘束するはずだろう。
……いったい、誰なんだ。
ドクドクと心臓が早く動く。
動けないでいれば、顎に手を添えられ。無理やり運転席のほうへと向かされた。
「ほら、再会の時間だ。和正のオンナだったんだろ?」
その声が耳に届くのと同時、車の前にあるバックミラーにうつっている人物が目に入った。
……もう、二度と会うことはないと思っていた人。
長いこと一緒にいたから、その人を忘れていない。
車を運転しているのは、まちがいなく──……和正。