月夜に笑った悪魔


ブンブン手を振っても、振り払えない手。
これではいつまでも話ができないから……手のことはいったん諦めた。


とにかく、話をしないと。


大きく息を吸って、彼をまっすぐに見た。



「学校内で私に話しかけないでほしいの」
「ヤダ」


さっきと同じことを言えば、返事は即答。


「知ってるかもしれないけど……私、ものすごく評判が悪いの。悪い噂とか流れてるから、私と学校で関わってたら暁も──」
「評判が悪いほうがいいじゃねぇか」


私の言葉は、彼によって遮られた。
目の前の彼はというと、口角を上げていて……。




「ヤクザにいい噂なんていらねぇよ。つーか、話ってそれ?とっとと戻ろうぜ」


私の手をひいて、歩き出す。


……た、確かに、ヤクザにもともといい噂なんてないかもしれないけどさ。


私といれば、マイナスのイメージがさらにつくんじゃ?
それに、友だちとかにもよく思われないかもだし……。


「待って!」


暁がドアノブに手をかけたところで、手を強く引っ張る。
すると、ピタリととまってうしろを振り返ってくれた。

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