月夜に笑った悪魔
再び合わさる視線。
彼はゆっくり口を開いた。
「俺がおまえと一緒にいたい、って思ってるんだからそれでいいじゃねぇか。おまえはなにまわりのことばっか気にしてんだよ」
アホか、と付け足される。
……最後の“アホ”ってのはいらないと思うんだけど?
「もういい!そう言うんだったら私はもうなにも気にしないからねーだっ!」
そう返して、ぷいっとそっぽを向く。
「安心しろよ。おまえになんか言うやつがいたら俺が殺してやるから」
ふっと笑う彼。
彼は軽く言ったけど、私は少し恐怖を感じた。
ヤクザが“殺す”なんて言うと、あんまり冗談に聞こえない。
「あ、そうだ。昼休みは社会科準備室に集合な」
最後に思い出したように彼が言ったあと、手を引かれて私の足もつられて動く。
社会科準備室?
「うん?」
なんでなのかわからないが返事をして2人で屋上を出て、階段を下りて。
彼は私のクラス、2年3組の教室の前まで送ってくれた。
どこにいても、やっぱり私たちは注目の的。
廊下にもたくさん人がいて、みんなこっちを見ていた。