月夜に笑った悪魔


じわりと目に浮かぶ涙。
瞬きをすれば、それはこぼれ落ちた。


それでも、彼をまっすぐに見続ける。
目を合わせて離してあげない。




「復讐をしたところで、失ったお母さんは戻ってくるわけじゃない。復讐をしたら、手が汚れるだけ。
暁は……一生罪を背負っていくことになるの。もしかしたら、心から笑えなくなるかもしれない」



心から笑えなくなれば、なにも楽しいと感じなくなってしまう。
楽しいと少しも感じなければ、幸せになんてなれるわけがない。


そんな人生は……絶対に暁に送ってほしくない。


辛い思いをたくさんしたからこそ、これからたくさん幸せになってもらいたいのに……。


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