月夜に笑った悪魔


「亡くなった暁のお母さんも、だれも……ぜったいに復讐を望んでない。
暁、ちゃんとよく考えて……。暁の大好きなお母さんは、『復讐して』って言う人?暁に、人を殺すことを望むような人?」



そう聞けば、逸らされる瞳。


私は暁の緩く結ばれたネクタイを強く引っ張って。
顔が近づいてくれば、両頬を手で包み込んでまた目を合わせた。


それでも逸らされそうになれば、「逃げないで!」と強く言う。


ぎゅっと強く閉じる彼の唇。
暁だって……答えはわかってる。




「……暁のことを守って亡くなったお母さんなら、そんなことを望むはずないよね。きっと、だれよりも幸せになってほしいと思ってるはずだよ」


私は暁のお母さんに会ったことがないけど、それくらいわかる。

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