月夜に笑った悪魔


「わかってるけど……やっぱ、今すぐはぜんぶ許せねぇよ」
「……うん」




「でも……殺そうと思うのは、もうやめる」
「うん……っ」




小さくて弱々しい声だけど、確かに耳に届く声。
ずっと、ずっと聞きたかったその言葉。


次々に溢れていく涙。


彼の大きな手が私の背中にまわって、少し痛いくらい抱きしめてくれる。





「暁……」


小さく声を出せば、「……なに」と返ってくる返事。


今言いたい言葉は、『辛かったね』とか『苦しかったね』とかじゃない。



「今まで、生きててくれてありがとう」


……生きててくれたことへの、感謝。


どんなに傷ついても、苦しくても、生きててくれたから会えたわけで。
暁には感謝でいっぱいだ。


「……ん」




暁は小さく返すとさらに強く私を抱きしめて。
しばらく、抱きしめあっていた私たち。

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