月夜に笑った悪魔
「似合わないって失礼だな、おまえ」
「いや、だって事実だし……。ブラックコーヒーのほうが似合いそうな顔してるよ」
「どんな顔だよ。つーか俺、苦いのとかムリなんだけど」
「えっ!そうなの?」
これも意外すぎる。
暁が昨日の朝と今朝に飲んでいた飲み物、それは勝手にブラックコーヒーだと思っていたから。
「俺は甘党だから、覚えとけよ?」
彼はストローに口をつけて、喉を動かして。
パックの中身がなくなれば、そのゴミをぽいっと少し離れたところにあるゴミ箱へと投げた。
それは見事にゴミ箱へと入る。
って、私はフルーツ牛乳のことを聞きたかったんじゃなくて!
「暁!私、暁のことなにも知らないんだけど……!」
彼の袖をぎゅっとつかんだ。
一瞬、ほんの一瞬だけ彼は驚いた表情をして。
そのあとに、
「俺のこと知りたくなった?」
口角を上げて、私を見てくる。
おもしろがってるのかと思ったが……気のせいか、少し嬉しそうにも見えた。