月夜に笑った悪魔
なんていろんなことを考えていると、急に開く車のドア。
運転席のほうが開いて、なにか忘れ物かと思えば……。
「これ、よかったら飲みなさい」
紫乃は小さな声で言うと、ペットボトルを2本差し出した。
ペットボトルは、500ミリリットルの水2本。
飲みなさい、ってことは……くれるってこと、だよね?
開いたドアから少し見えたのは、自動販売機。
そこで、わざわざ買ってきてくれたのだろうか。
「…………」
「心配しなくてもなにも変なものは入れてないわ。すぐそこの自販機で買ったものだから。強制的に飲め、とかそういうのじゃないから好きにしなさい」
予想外な行動に固まっていると、そのペットボトル2本は近くに置かれた。
「……いや、ちがくて。優しいなって思っただけ……ありがとう」
思ったことを素直に伝えると。
「……そう」
紫乃は小さく返して、ドアを閉めて戻ってしまった。