月夜に笑った悪魔
「まだ未練あんの?」
今度は私が遠慮なく聞かれる。
……もういいや。
変に嘘ついてもバレそうだし、はっきり答えよう。
「……はっきり言えば、めちゃめちゃ未練ある」
思いきって答えれば、「知ってる」と軽く返される。
……暁は、いったいなにを思っているんだろうか。
顔に出てないからさっぱりわからない。
「……ごめん。すぐ忘れるように努力する」
お箸を置いて、自分に言い聞かせるように声を出した。
和正との思い出はたくさんあるから、忘れるまでにどのくらい時間がかかってしまうかわからないけど。
できるだけ、早く忘れられるように努力したいから……。
下を向いていれば、急に横から伸びてきた手。
私の顎をくいっと持ち上げて、暁のほうを向かせられた。
「別に、ムリに忘れなくてもいいんじゃねぇの。おまえが元カレより俺のこと好きになればいいだけだろ。
だから俺のことだけ考えて、頭ん中俺だけでいっぱいにして、早く俺を好きになれよ」
顎に添えられた手が頬に移動して、優しく触れる。