月夜に笑った悪魔
「即答か」
私の返事を聞いた彼は笑って。
私から手を離すと、座りなおしてお弁当を再び食べ始めた。
ドキドキする心臓を落ち着けようと、飲んだ水筒のお茶。
氷が入っていて、すごく冷たい。
落ち着けるためには、ちょうどいいや。
ごくごくと飲んでいれば、隣から「美鈴」と名前を呼ぶ声が聞こえてくる。
横目で見れば、すぐに目が合って……
「キスしていい?」
次に聞こえてきた声に、盛大にむせた。
な、な、なに!?
……き、キス!?
お茶が変なところに入って、咳がとまらない。
「なにしてんだよ。冗談だって」
暁は笑いながら私の背中をさすってくる。
バカ!、って大きな声で言ってやりたかったが、咳が出て言える状況ではなく。
代わりに彼の足を思いっきり踏んだが、あまりダメージはなかったみたい。
私はしばらく咳き込んで、落ちついたらそっぽを向いてお弁当を食べたのだった。