月夜に笑った悪魔


反射的にそっちへと目を向ければ、見えたのは。



「暁……っ!!」


会いたいと思っていた人。
大きな声で彼を呼べば、彼は驚いたように私を見て。


数秒見つめあったあと、こっちまで駆け寄ってきてくれる。




「美鈴、おまえまだ──」
「暁……私、約束通り死ななかったよ」


彼の声を途中で遮り、袖を軽くつかんで報告。


「……ん」
「三途の川は見もしなかった」


「……わかったから、ちょっとじっとしてろ」



暁は手に持っていたものを置くと、私を強く抱きしめた。

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