月夜に笑った悪魔


伝わる体温。
鼻腔に届くいい匂い。



暁に包まれるのは、ドキドキするけど……戻ってきたっていう安心感がある。


その安心感と同時にくるのは、眠気。



……なんでだ。
さっき起きたばかりなのに、また眠くなるなんて。


充分寝たんじゃないの、私の体……!




「おまえ、まだ寝てろ。傷開くから」


暁に体を預ければ、急に抱きしめられていた腕の力が弱くなる。


眠気に気づかれたのか……。




「……もっと一緒にいたい」


暁が離れようとするから、小さく呟いて私は彼の背中に手をまわした。


強く入らない力。
それでも必死に彼に抱きつく。



「……そういうかわいーこと言うと、病人でも寝かさねぇよ?」


耳元で聞こえてくる声に、心臓がドキッと鳴る。

< 599 / 615 >

この作品をシェア

pagetop