月夜に笑った悪魔


「店内!ここ、店内だから!」


はっと我に返ってボタンをはずしていく手もつかむが、もう半分以上はずされたあと。


この男、こんなところでなにをする気なんだ……!
いくら貸し切りといえど、店員さんがいるのに……!


常識ってものがないのか、常識ってものが!
2人きりだったらいい、ってわけでもないけど!




ま、まだ暁とする……とか考えられないよ。


「大胆に俺をここに入れたのは誰だっけな?」
「そ、それは話をするためであって──、っ!?」





突然、左肩に走った痛み。


暁がブラウスをめくってきたと思ったら……なんと、噛みついてきたんだ。



歯が強く当たって、痛みを残して離れていく。


か、噛んで……!?










「そう簡単に“なんでもする”とか言うもんじゃねぇよ、おねーさん」


私から離れた彼はそう言うと、試着室のカーテンを開けて、靴を履いた。

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