月夜に笑った悪魔


「…………」


……これは、忠告、だろうか。
もしかして……最初からする気なんてなかった?



暁のうしろ姿を見つめていれば、彼は振り返って。


「1人で着替えらんねぇなら手伝ってやってもいいけど?」


再び、口角を上げる。


「ひ、1人で着替えられるから大丈夫っ……!」


私はすぐにカーテンを閉めた。






壁に背中をつけて、座り込む。
遅れたようにやってくるのは、心臓のドキドキ。



……暁、いい匂いだった。
……指、長かった。


まだしっかりと体温も覚えていて、体が熱くなっていく。


って、なに思い出してドキドキしてんのさ、私は!
急にされたからびっくりしただけなのに……!



床に落ちたリボンを拾って、すぐに立ち上がった。
──そのすぐあと。




勢いよく開いた試着室のカーテン。




「あ、礼は今度ちゃんと受け取る。おまえに手伝ってほしいシゴトがあるから、それが礼ってことで手伝って」


カーテンを開けて、そう言ったのは暁。

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