月夜に笑った悪魔
「……あ、あかつきっ」
自分の力ではもうどうすることもできなくて、彼を呼ぶ。
……自分が情けない。
このシゴトの手伝いは今までお世話になったお礼のはずなのに、助けを呼ぶなんて。
こんなはずじゃなかった。
私は、自分に任されたシゴトをしっかりやって、なにごともなく無事に終えるはずだったのに……。
こんなんじゃ、ぜんぜん恩は返せてない。
ショルダーバッグさえなくさなければこんなことにならなかったのに、なくしちゃうし……私、本当にバカだ。
私が彼を呼んだところで、彼は今もまだ会場内にいるかわからない。
会場内にいたとしても、あんなにうるさい会場にまで私の声が届くかもわからない。
……でも。
「暁!!助けて……っ!!」
情けなくても、大声で叫ぶ。
「……どうしたんだい、急に。アカツキ、って……?」
男性は顔を上げて、私を見るがひたすら大きな声を出し続けた。
「あんまりうるさいとその口塞いじゃうよ……」
近づいてくる男性の顔。
男性は、唇を尖らせて私の唇を凝視。