月夜に笑った悪魔
き、キス、する気だ……!
絶対やだ……っ!
私は顔を逸らして、ひたすら暁を呼ぶ。
……でも、彼が来る気配はない。
いない……?
……声は、届かない?
ぽたりとこぼれ落ちる涙。
私は、幸せになりたかった。
暁といれば幸せになれるかもしれないと思った。
でも……結局、私は幸せになれない運命だったのかもしれない。
……あーあ。
ひどいな、神様は。
私、前世でなにかした……?
少しくらい私の味方になって助けてくれてもよくない?
逃げることができず、ただぎゅっと強く目を閉じた。
震える体。
……誰も助けに来てくれない。
だからされるのなら早く終われと願った、が……。
『もし、アレなくしても……俺のことだけ考えて、頭ん中俺だけでいっぱいにして、“暁大好き”って言ったらすぐ助けてやるよ』
──ふと思い出した、暁の言葉。
出発する前に彼が言っていた言葉。
盗聴器もGPSもなくしても、助けてくれるって……。
私は暁の顔を思い浮かべて、暁だけを考えて、大きく息を吸って。
「……暁っ!!好き、大好き!!愛してる!!だから早く助けてバカっ!!」
腹の底から声を出した。