月夜に笑った悪魔


「あと、もうひとつ謝らなくちゃいけないことがあってね……あの、ショルダーバッグなくしちゃった……」


ごめん、ともう一度謝る。


ミニショルダーバッグ、あれはぜったい高価なものだろう。
GPSが入ってるから、探すことは可能だと思うけど……綺麗な状態のままあるかは微妙なところ。


それから、あの中に入れておいたのは買ってもらったばかりのスマホ。
それが抜き取られているということもあるかも……。


なんでなくしちゃったんだ、私は。





「それなら大丈夫だから」


下を向いていれば、聞こえてきた声。


「……?」


……大丈夫?
……なにが?


不思議に思って顔を上げて彼を見れば……。





「アレ、とったの俺だし」


次に聞こえてきたのは、衝撃的な言葉だった。


「……はい?」


アレ……って、ショルダーバッグのこと、だよね?
それを、とった?暁が?


あまりの言葉に信じられないでいれば、彼は笑う。




「意外と簡単にバッグ奪えたからびっくりした」


……本当に、暁がとった!?

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