月夜に笑った悪魔
私が履いているのはヒール。
あとから思い出したけど、あまりの怒りで気にする言葉も出なかった。
ただ少しでも痛みを味わえばいい、って思った。
走ってこの部屋を出れば、どんっと誰かにぶつかる。
「美鈴ちゃん!?」
ぶつかったのは、吉さん。
吉さんの後ろには、黒服に身を包んだ男性5人。きっと一条組の人たち。
「す、すみません……!」
「どうしたの……って、暁しかいないわね」
「…………」
「暁がごめんね。あたしがよくお説教しておくわ。
美鈴ちゃんは疲れたでしょう?先に車に戻ってていいわよ」
「……ありがとうございます」
ぺこりと頭を下げれば、吉さんは組員の1人を車までの案内役にしてくれて、私はありがたく先に車に乗って休ませてもらった。
数十分後には、吉さんたちが車へと乗り込んだが、暁の姿はなく。
暁はバイクで来たみたいで、帰りは別々。
家に帰ってから彼と会ったが、無視してすぐに自分の部屋へと入って。
この日は体が疲れていたから、すぐに眠りについたのだった。