月夜に笑った悪魔


まぁ、和正の浮気がわかって、いい子にしていてもぜんぶがうまくいくわけじゃないって思い知らされたけど……。





いい子じゃない暴力を振るう女は、もっと早く嫌われそうだ。


いくらひどいことをされたからって、ヒールで思いっきり足を踏むなんて。
ひどいことをされても、私を拾ってくれた恩人なのに……。



シゴトの手伝いをした次の日、私の怒りはまだあったが少し冷静になった。


私が暁に嫌われたりすれば、終わり。
捨てられて、私は確実にホームレスになる。

……1人になってしまう。





そうなる前に謝ろう──と思っていたんだけど。


たまたま隣の部屋の前を通った時に聞こえてきた音声。
隣の部屋は、暁の部屋で。


聞こえてきたのは……
昨日、私が暁に助けを呼んだ時のもの。


私が暁に言われた通り……いや、それ以上の言葉を口にしている音声。



なんで、そんな音声まであるのか。
……わざわざ録音していたのか。

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