月夜に笑った悪魔
ぽつぽつと降る雨。
濡れている地面。
少し先を歩く暁のところまで走って、私はその傘に入る。
「……俺のこと、世界で1番嫌いなんじゃねぇの?」
驚いたように私を見る彼。
「……嫌い。でも今は歩きたい気分なだけ」
ほんとに、許したわけじゃない。
いつも私だけ車に乗せて送迎してもらうのは申しわけないと思っていたから、暁が歩いて行くのなら私も一緒に歩いて行こうと思っただけ。
本当に、それだけ。
「おまえ、反対側来て」
傘から追い出すようなことはされず、家の大きな門を2人で出れば、急にぐいっと手を引っ張られて私は暁の右側へと誘導される。
……どっちでもよくない?
そんなことを思いながらも、置いていかれないようにと歩いた。
歩幅が私よりも大きい彼は、歩くのがはやい。
気を抜いたら置いていかれそうだ。
「はやい?」
早歩きしていれば、それに気づいてくれたみたいでこっちに視線を向ける彼。
「……はやい」
「じゃあもっとはやく歩いて」
「えっ」
「うそ」
私の反応を見て、ふっと笑うと歩くスピードを落としてくれた。