月夜に笑った悪魔
すぐに手を離そうとすれば……
なぜかピタリと足をとめた暁。
まだ、信号じゃない。
前後左右よく見たが、車や自転車が来ているわけでもなかった。
……暁?
「ね、ねぇ、どうしたの……?」
声をかけてみるが、彼は無反応。
本当に、急にどうしたのか。
私も立ちどまっていると……だんだん近くなってくる音。
さっきから遠くで聞こえてきていた音が、近くなってきている。
聞こえてくるのは──救急車のサイレン。
こっちに来るのかな。
そう思っていれば、本当に救急車が見えた。
大きな音でサイレンを鳴らし、曲がってこっちに来る。
スピードを出して走る救急車。
すぐに私たちの横を通り過ぎていく。
そのすぐあと。
隣から聞こえてきたのは、荒い呼吸。
隣の彼を見れば、驚くほど顔色が悪かった。
青白い顔。
それから、冷たく汗ばんだ手。
……明らかに様子がおかしい。