月夜に笑った悪魔
「暁……?」
そっと声をかけてみると、彼ははっと我に返って。
「……おまえ、車で行って」
小さな声でそれだけ返すと、彼は来た道を戻りだした。
合わせてくれない歩幅。
彼は早歩きで歩くから、私は小走りでついて行く。
それからというもの暁に声をかけても、なにも答えてもらえず。
家の大きな門のところにたまたまいた吉さんに私は引き渡され。
彼は傘を私に渡すと、雨の中どこかへと行ってしまった。
……本当に、急にどうしたのか。
あんなに顔色悪くして……急に具合悪くなったとか?
それとも……私と死ぬほど相合傘したくなかった?
私の態度が悪かったから、怒ったとか?
「あの、すみません……」
とりあえず、吉さんに謝った。
「美鈴ちゃんは悪くないわ。暁は……強いけど、弱いやつなのよ」
返されたのは、よくわからない言葉。
強いけど弱い、とは……。
それからは、私は車を用意してもらい。
結局、今日も学校まで送ってもらったのだった。