月夜に笑った悪魔



***


「美鈴、ちょっといい?」


4時間目の授業終了後、すぐ私に声をかけてきた人物にびっくりした。


笑顔で声をかけてきたのは、ショートカットの女の子。
この子は高1の時に友だちだった瀧本 由美(たきもと ゆみ)。

前にケンカをして、私の変な噂を広めた張本人。




今までずっと私のことを無視していたくせに、今さらなんの用があるのか。



「私、あの人から美鈴に渡すように預かったものがあるの」


なにも答えないで鞄を持ってこの場から立ち去ろうとすれば、聞こえてくる声。


……“あの人”?
私に渡すように預かったもの?


思わず足をとめて。
私は由美を見ると、彼女はにこりと笑った。


「あっちで話そ?」


わかりやすい作り笑い。
いったいなにを考えているのかわからない。わからないけど……。


「……わかった」


私は気になって、2人で教室を出た。

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