僕と名の知らない君は、嘘つきから始まった
メドゥーサの子供
「……莉衣(りい)?」



幾度となく通った大学病院の、何度も訪れた503号室。



9月の下旬で季節の変わり目のこの時期、僕ー轟 亜嵐(とどろき あらん)ーは、その病室に足を踏み入れた。




僕には、生まれつきの病気……の様な、能力の様な、とにかく何と言えば良いか分からない症状がある。



それは、『目を合わせた人を石にしてしまう』という、何とも絵本に出てきそうな症状だ。



それは遺伝性のもので、僕の父親も、祖父も、曽祖父も、弟も、その症状ーというより力ーと真剣に向き合ってきた。



その原因は曽祖父にあるらしい。



何でも、僕の曽祖父はメドゥーサの子孫で、その血を引き継いだ僕や弟は、メドゥーサの末裔にあたるらしく。



その力が男にしか引き継がれない、というのが不幸中の幸い、といった所か。



曽祖父は人間の女性と結婚したし、メドゥーサと人間のハーフの祖父も人間と結婚し、父親も人間と結婚したから、僕の中のメドゥーサとしての力が薄れている事は事実だ。



結婚した人間の女性を、僕らが固める事は無い。



メドゥーサと人間の女性が両思いになると、好きになったメドゥーサとその他のメドゥーサがその人を固める事はほとんど出来ないらしい。



しかし、僕の目を見た人は“石になる”とまではいかないけれど、ずっとでは無いものの固まってしまうのも事実で。
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