僕と名の知らない君は、嘘つきから始まった
「あ、亜嵐?」
彼女のベッドは、2人用の部屋の奥のベッド。
窓際で、それなりに景色が見える。
手前のベッドには僕と同い年位の男子が入院しているけれど、今は居ないらしい。
ねえ聞いて、随分はっきり景色が見えるようになったの!、と明るく言いながら、彼女はこちらを振り向きかけて。
「駄目、こっちを見ないで」
僕の低い声に驚いたのか、
「あ、うん…」
彼女は、最初と同じく窓の方に顔を向けた。
「…亜嵐、どうしたの?怒ってる?」
少しの間の後、口を開いたのは彼女の方だった。
(怒ってるわけ…)
「怒ってないよ。…むしろ、莉衣の目が見えるようになって本当に良かったって思ってる」
僕は、サングラスのせいで暗くなった視界の中、莉衣の後ろ姿に向かって話し掛ける。
「じゃあ後ろ向いていい?私、早く亜嵐の姿を見たいんだけ」
「あのさ」
僕は、半ば彼女の言葉を遮る様に口を開いた。
早く言わないと、僕の髪の毛が蠢きそうだからだ。
確かに、僕の飲んでいる薬は自分の力をコントロール出来るけれど、髪の毛が動いている時はコントロール出来ない。
自分の髪の毛が動いている時に誰かを見ると、僕は必ずその人を固めてしまう。
こればかりは、薬だろうと何だろうとどうにも出来ない。
彼女のベッドは、2人用の部屋の奥のベッド。
窓際で、それなりに景色が見える。
手前のベッドには僕と同い年位の男子が入院しているけれど、今は居ないらしい。
ねえ聞いて、随分はっきり景色が見えるようになったの!、と明るく言いながら、彼女はこちらを振り向きかけて。
「駄目、こっちを見ないで」
僕の低い声に驚いたのか、
「あ、うん…」
彼女は、最初と同じく窓の方に顔を向けた。
「…亜嵐、どうしたの?怒ってる?」
少しの間の後、口を開いたのは彼女の方だった。
(怒ってるわけ…)
「怒ってないよ。…むしろ、莉衣の目が見えるようになって本当に良かったって思ってる」
僕は、サングラスのせいで暗くなった視界の中、莉衣の後ろ姿に向かって話し掛ける。
「じゃあ後ろ向いていい?私、早く亜嵐の姿を見たいんだけ」
「あのさ」
僕は、半ば彼女の言葉を遮る様に口を開いた。
早く言わないと、僕の髪の毛が蠢きそうだからだ。
確かに、僕の飲んでいる薬は自分の力をコントロール出来るけれど、髪の毛が動いている時はコントロール出来ない。
自分の髪の毛が動いている時に誰かを見ると、僕は必ずその人を固めてしまう。
こればかりは、薬だろうと何だろうとどうにも出来ない。