僕と名の知らない君は、嘘つきから始まった
「…何?」



僕の口調から何か嫌な事でも察したのか、彼女の声の音量も小さくなった。



「あのさ……、僕ら、別れない?」



そして、僕はとうとうその話を切り出した。



「っ……?」



「多分、今月中とかに莉衣は退院するだろ?そしたら、多分もう僕らは会えなくなると思うんだ。連絡先も交換してないし、そもそも僕自分のスマホ修理に出してるし…。莉衣は元気になるけど、僕はこれからもずっと通院生活だし」



生きてる世界が違うんだ、と、僕は2つの意味を込めてその言葉を口に出した。



「そんな事っ!」



涙声になった莉衣が、こちらを向こうとする。



「振り向かないで、!」



僕は、すかさず彼女の動きを止めた。



「っ、……何で?」



彼女の台詞も、何重もの意味を含んでいると思う。



何で振り向いてはいけないのか。



修理に出しているとはいえ、何で連絡先を交換出来ないのか。



何で別れないといけないのか。




「…ごめん。……手術成功して良かった。まだだけど、退院おめでとう。元気でね」



これ以上何かを言ったら、僕も泣いてしまいそうで。



とりあえず言いたい事は全部巻きで話せたから、一応思い残す事は無い。



だから。



「…最後に、ハグしてもいい?」



最後の最後に、僕の正体を言おう。
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