僕と名の知らない君は、嘘つきから始まった
僕に背中を向けたまま、その背中を小刻みに震えさせながら、彼女は小さく頷いた。



彼女と面と向かってハグをする事は出来ない。



だから、僕は若干の後悔を抱えながら彼女のベッドまで歩み寄り、彼女の首に手を回してバックハグをした。



「、亜嵐っ……、やだっ……!」



(ごめんね、そんな気持ちにさせて)



女の子を泣かせるなんて、僕はなんて酷いのだろう。



僕の腕を掴んで泣きじゃくる彼女に向かって、僕はゆっくりと話し掛けた。



「あのね、莉衣。……僕、君の思ってる様な人じゃないんだ。…人間じゃないんだ」



「、?」



瞬間、僕の腕を掴む彼女の手の力が緩んだ。



「メドゥーサ、って分かる?目を合わせた人を石にする、あの化け物」



僕は太古の昔から人間に恐れられてきた、伝説上の化け物。



「僕は、その化け物の末裔なんだ」



「っ、何を言ってるの?」



納得いかないように、莉衣が口を挟む。



それもそうだろう、いきなり彼氏が頭の狂った事を言い出したのだから。



「信じられないなら信じなくても良いよ。でも、最後まで話を聞いて欲しい」



僕の作り話だって思ってもいいから、と付け足すと、彼女は大人しく頷いた。
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