愛は惜しみなく与う②
あの扉は、大勢の真正面にでてしまう。
この塀は越えるには、ちょっと高過ぎる。
周りに木とか登れそうなものもない。
新が離れだと言っていた方を見る
比較的静かで入るなら、やっぱり此処か
朔はこいつどうする?と伸びてしまった男を地面にそっと置いた。
まぁ目覚めるまで騒がれなかったらそれでいい。
「おい、杏!お前の勘で泉どこにいるか当てろよ!」
「アホいいな。そんなんできひん!目凝らして探せ」
垣根の隙間から中を見るが、勿論あたしが知ってる顔がいるわけもなく、もどかしく時間が過ぎていた
ガサガサ、ザワザワ
ん?
声が聞こえる
突然だった。
…
その声、内容
すべて鮮明に聞こえた
それを聞いて、考えるよりも先に、身体が動いていた。
ほんまあたし何でこんなに考えなしなんやろ
そう思ったけど、身体が動いたんや。しゃーない
「お、おい!杏??」
突然動き出したあたしを見たからか、朔の慌てる声がしたが、それどころではない
ごめん、みんな
「急がな!」
離れの方の塀は、少し高くなっている。後ろに下がり助走をつけて飛び乗る。