愛は惜しみなく与う②

部屋がシーンとする

広い部屋に俺と杏だけ



「はぁーー疲れた。ほんま疲れた。なんかツンツン頭のやつが銃もって、お父さんのこと狙ってたで」


「うん、怖かったよな。ありがと」


「久しぶりよ、あんなん」


はははって笑って済ませれるのは、本当に杏だけだと思う


「お父さんと…どうやった?」


「…だいぶ拗らせたけど…初めて親父の気持ちが分かった気がした」


よかったな
そう言って杏は俺の頭を引き寄せた


「今ならみんなおらんし、甘えても大丈夫なんやで?」


それはまるで、子供でも相手するような言い方
でも俺にはそれが今必要だった

杏の腰にそっと手を回す


「親父…薬やってなかった。俺が話し聞かずに噂だけで、親父と組を罵った。それに俺が家を出た時…既に親父は癌だと言われていたらしい」

俺はなにも知らずに


「うんうん、それで?」


「それで…ずっと昨日まで誤解してた。別に親父はいい奴ではない。昔された事とかは覚えてる。でも…俺が思ってるより、悪い人じゃなかった」


あぁ泣きそうになってきた
杏はうんうんと相槌を打って、俺の頭をポンポンと叩いていた
< 170 / 419 >

この作品をシェア

pagetop