愛は惜しみなく与う②
部屋がシーンとする
広い部屋に俺と杏だけ
「はぁーー疲れた。ほんま疲れた。なんかツンツン頭のやつが銃もって、お父さんのこと狙ってたで」
「うん、怖かったよな。ありがと」
「久しぶりよ、あんなん」
はははって笑って済ませれるのは、本当に杏だけだと思う
「お父さんと…どうやった?」
「…だいぶ拗らせたけど…初めて親父の気持ちが分かった気がした」
よかったな
そう言って杏は俺の頭を引き寄せた
「今ならみんなおらんし、甘えても大丈夫なんやで?」
それはまるで、子供でも相手するような言い方
でも俺にはそれが今必要だった
杏の腰にそっと手を回す
「親父…薬やってなかった。俺が話し聞かずに噂だけで、親父と組を罵った。それに俺が家を出た時…既に親父は癌だと言われていたらしい」
俺はなにも知らずに
「うんうん、それで?」
「それで…ずっと昨日まで誤解してた。別に親父はいい奴ではない。昔された事とかは覚えてる。でも…俺が思ってるより、悪い人じゃなかった」
あぁ泣きそうになってきた
杏はうんうんと相槌を打って、俺の頭をポンポンと叩いていた