愛は惜しみなく与う②


「仕送りも、親父がしてたらしい。俺のチームのことも、たまに調べてたらしい。俺が気に病まないように……病気のことも黙ってたらしい。三年も。ステージ4だってさ。それって酷いのか?分からないけど、あんなに弱々しくてやつれた親父、見たことなかった」  


よしよし
そう声に出す杏

こんな姿、杏以外の奴に見られたら、立ち直れない


「俺今更なに話せばいいか分からなくて。もっと色々プランあったのに。心のどこかで、親父が薬してなかったらいいのにって思ってたから…それが現実になって、戸惑ってる。でも、向き合えたと思ったら、親父は癌で…」


そう言うと杏は俺の頭を抱える腕に力を入れる



「お父さん、一回生きるの諦めてた。でも…最後にな?あたしに、あいつにすまなかったって言ってくれって言ったねん」


え?


「最後にな、それを伝えたかったのって、泉にやと思う。なんかあたしのこと知ってるみたいやったんやけど…」


「それは俺が…守りたいって言った」


そう言うとケラケラ笑うのではなく、口元に手を添えて、クスっと杏は笑った
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