愛は惜しみなく与う②
「別に?間とかなかったし。あ、水着売り場!はよ選んで帰るで」
朔を無視して目の前にある水着売り場に入る
ふぅ
あたしはあの手の話は苦手や。
別に誰がどんな付き合いしてても、あたしは気にはならへん。
ただ自分のことは語れるもんじゃない。
少し目を閉じると
忌々しい記憶が蘇る
『お姉ちゃん…』
そう言って涙を流す鈴
その鈴を笑いながら犯すサトル
気持ち悪い…
全身に鳥肌が走り、身体が震え出す。
自分の身体をきゅっと抱きしめる
慧と朔は売り場で水着を見てワイワイ言っている
今は…あかん
思い出したらあかん
おさまれ、震え
息苦し…
「杏?大丈夫か?」
優しい声があたしを現実に引き戻す。
肩をポンと叩かれて、それにハッとして振り返ると、心配そうな顔をした泉がいた
はぁ
よかった。危なかった
「震えてた。気分悪いか?」
「ん、ごめん。大丈夫」
肩に乗る泉の手に触れる。
大丈夫。あたしはまだ大丈夫…
じーーっとあたしを見てから、泉は動いた
「……おいで?」
ん?