愛は惜しみなく与う②

はたから見たら、塀の上はしりまわって、飛び降りる頭のおかしい女かもしれへん


でもあたしにはちゃんと見えたから


飛べってなんや、飛べって


でも何も躊躇いもなく塀から道路側に飛ぶ


落ちたら重症


でも大丈夫


下で手を広げて待ってる泉がいたから…


あたしに殆ど衝撃ないくらい、華麗にキャッチしてくれた


「杏!大丈夫か?」

「さっきまで大丈夫やったけど、今はちょっと疲れたかも…ははは」


ぎゅっと強く抱きしめられる

あかんあかん

「泉…左肩めちゃ痛いねん」

泉に追い討ちかけられる所やった
ハッとして泉はあたしの肩を見る。悔しそうな顔をして、あたしを抱えた


お姫様抱っこってやつや

まぁ抱えられてる女がこんなボロボロやと様にならへんけど

もうあれやな。


疲れた


泉の顔見たら安心したわ


寝よ



「杏?」

「寝る」

「…ごめんな」


最後に謝ってたけど、ほんま寝るゆうたら、一瞬で眠気が来た

泉が謝ることちゃうのにな


あたたかい体温に包まれて、あたしの波乱万丈の午前中は幕を閉じた


……
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