愛は惜しみなく与う②



「私もこの組を潰したいです」



初めて聞いた声はか細くて消えてしまいそうな声


ただその瞳には、光が灯った



震える少年の手を引き部屋を出ようとする。筋肉が衰えてるのか、久しぶりに歩くからか、フラフラする少年を担いで扉に手を触れたが、開かなかった



「…外からしか開きません」


はぁ


そりゃそうだ

鍵のかかってない扉だった。出れるなら…それならもうとっくに逃げてるよな


震えて泣きそうな少年の頭に手を置く


「名前は?」

「あ、新です」


ようやく答えてくれた


「俺は泉。お前俺のこと調べてたみたいだし、知ってるだろ?」


新と名乗った少年が調べ上げたデータには、俺のことも詳しく書いてあった。
新は首を縦に振る


「あなたは、優しい人だ」


そう言った


バカ言うなよ。調べてあったってことは家のことも知ってるだろうに。喧嘩三昧なのも知ってるだろうに


何言ってんだか


部屋をぐるりと見渡すが、ドアノブを壊せそうなものがない

何かブチ破れるものがあればいいんだが


携帯も圏外になって使い物にならない


蹴るか

痛めそうだな、なんて考えながら助走をつけたら、新にとめられた
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