愛は惜しみなく与う②
あらかじめ呼んでおいた車に乗る
一応俺は、ヤクザの組長の息子。若頭というやつだ。まぁ…家に帰ってもいないから、実感もなにもない。
中学生くらいの時は、よく仕事を手伝わされた。いずれやる事だから見ておけと。
記憶にも残らないほど興味がなかった
「若!お待たせしました」
耳に懐かしい声が聞こえる。振り返ると厳つい黒の車の窓が少し空いて、運転席から手を振る人物が見える
「若って言うな」
何度やめろと言っても、俺をそう呼んでくるこの男は、組の幹部の『 白瀬 』
白瀬は昔、親父に拾ってもらって、最後まで尽くすと誓ったそうだ。
だからこそ
道を外した親父を、救いたいと、俺に協力してくれている
「久しぶりですね。また背が伸びたんじゃないですか?」
「伸びるかよ。何歳だと思ってんだよ」
白瀬はヤクザと呼ばれる威厳はないかもしれない。どちらかと言えば、さわやかな好青年。
「若が動いたってことは…もう始めるんですか?」
「…あぁ。遅くなったけど、ちょっと向き合ってみようと思う」