ハジマリ
「…一回、美南ちゃんに教科書を借りた事あるんだけど…覚えてないよね。」

「えっと…。」

私は頭をフル回転させる。普段、教科書を他人に貸す事はそんなにないから覚えているはず。

「あっ前嶋君に言われた時だ。『俺の教科書は別のヤツに貸したから、牧村、コイツに貸してやってくれないか?』って。そうだ。あれが横山君だったんだ。」

思い出してスッキリした私は、思わず満面の笑みで横山君を見る。そんな私を見て、横山君は笑い出した。

「あはは。思い出してくれてありがとう。実はあの時の教科書借りるのも、美南ちゃんと話すキッカケが欲しくて、前嶋に協力してもらったんだ。結果失敗したけど。」

「話すキッカケって…何で…?」

ヤバイ。何だか胸の奥が熱くなり始めた。

「1組の教室に行く度に、何か友達と楽しそうに話している美南ちゃんを見つけて、可愛いなって思って目で追うようになって、気がついたら…好きになってた。」

まさかの告白にどうして良いものか分からず、何も言えずに私は頬を赤らめ視線を下に向ける。

「改めて口にすると、俺って気持ち悪いヤツだよね、ごめん。でもさっき告白された時に好きな人がいるって言ったら本当に目の前に美南ちゃんいて、本気(マジ)でビックリした。俺、幻覚みるほどヤバイ奴になってしまったかって。」

横山君は笑いながら話を続ける。

「本当に美南ちゃんの事、好きなんだ。」

さっきまで笑っていたかと思うと、今度は真剣な表情でまっすぐ私を見つめる。その表情に私はドキドキが止まらない。

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