ハジマリ
「だから…彼氏を前提とした友達になってくれませんか?」

彼氏前提の友達…面白い事言うなぁ。

「友達として付き合いつつ俺の事をちゃんと知ってもらって、少しでも好きになってくれたら、その時は友達から彼氏に昇格してもらえたら嬉しいなって…あぁダメだ俺、何言ってんだろ。肝心なところでキメきれないし。」

横山君は頭を抱えて1人で落ち込み始めた。

「…はい。」

「…え?今『はい』って…言った?」

頭を抱えていた横山君は、私の返事を聞くと驚いた様子でパッと私を見る。

私はにっこりと笑顔を見せた。私の笑顔で聞き間違えではないことを悟ると、横山君は嬉しそうに私を抱きしめた。

「勇気…だして良かったぁ。ありがとう。」

私の耳元で囁く。抱きしめた横山君から心臓がバクバクしているのが伝わってくる。私のドキドキも…伝わっているかな。

「ご、ごめん。これは友達にする事じゃないね。」

横山君は抱きしめていた手をパッと離す。改めて横山君の顔を見ると真っ赤になっていた。

「恥ずかしいから、今は顔見ないで。」

私の視線に気づいたのか、横山君は自分の顔を片手で隠した。

「あはは。ねぇ…友達付き合いってどうしたらいいかな?」

私は横山君に尋ねる。男友達のいない私は男女の友達付き合いがピンとこない。

「俺も分からない。自然の流れに任せよう。とりあえず…一緒に帰ろうか?」

「うん。」

こうして、私と横山君の彼氏を前提とした友達付き合いが始まった。

この先どうなるか分からないけど、この短い時間、横山君と話をして何となく予感はあった。

キスのフリも抱きしめられたのも全然嫌ではなかった。話をしてうちに彼に惹かれる自分がいた。

きっと私は横山君の事好きになる…

そんな予感…。

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