今夜、桜の木の下

昔のことをぼーっと思い出していると
ママの声で現実に戻った




「ママちょっと外で電話してくるから」


「うん!分かった」


ママはそう言って上着を羽織って病室を出ていった


そのタイミングを待っていましたよ私は


すぐに美奈にメールした

「今なら大丈夫」


実は今日は美奈がお見舞いに来る日
ママがいなくなるのを待ってメールでやり取りしていた


すると1分もしないうちに美奈がきょろきょろ周りの様子を伺いながら、病室のドアを開けた
私の顔を見るなり満面の笑みで両手を広げて
ヒールをコツコツ鳴らして走ってくる


あぁ美しい顔面が走ってくるって素直に思った


「千夜ぉぉおー!!」


「美奈!会いたかったよぉー」


美奈は私と違ってショートカットで背が高くて
すらっとした美人、サバサバしてるようだけどすごく純粋で根が優しい子
そしてもっと重要なこと
2週間分抱きしめて分かる美奈のいい匂い
あーーーー、シャンプーの匂いたまらない



「元気か!いや元気じゃないよね笑」


美奈は私の横の椅子に座って毎日会ってる位のテンションで私に話してくれる


「ううん!良くなってきたの!全然元気だよ!」


美奈は過保護なママのことを理解してくれていて
小さい頃からずっと一緒にいてくれた友達
過保護なママがいるから付き合いが悪いと離れていく子もいたけど、美奈だけはそばに居てくれた


「ごめんね、こっそりしか入れてあげられなくて」


「ううん!仕方ないよ、千夜が気にすることなんてない!」


実はあの日から美奈とはあまり仲良くしていないとママに言うようになっていた、
あの日のことがあってから素直に遊びたいと言うと遊ばせてくれなくなったから


だから図書館に行くって嘘をついて
ママが迎えに来るまで近くの公園でこっそり二人で遊んでいた
だから今も仲がいいなんてママは知らない
だからある意味命懸けでお見舞いに来てくれた


「あーあ、もっと沢山会いたいなぁ
また来てよ?もう暇で暇でメールだけだと美奈の養分足りなくて倒れちゃうよ」


「ばかか笑また来るね絶対!」


ママが誰と話してるかなんて知らないけど
電話に出かける時は時間がかかるのを知っていた
久しぶりに会えた美奈との会話は弾んだ


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