今夜、桜の木の下
ママとの溝が埋まる日は来るんだろうか。


私のパパは私が小さい時に、交通事故で亡くなった


その時ママは仕事が忙しくて、病院からの電話に気づかないまま時間が経って、パパの死に目に会えなかった


私は幼稚園から帰ってきて
ママが迎えに来るまでおばあちゃんの家で
待っていた、本当によく覚えてる
家の電話がなって、おばあちゃんの顔から血の気が引いて、私を抱えて急いで病院に行った


私が病院に着いた時
パパはまだ息があった
でも、もう目を覚ますことは無い。
ただ死ぬのを待つ状態だった
そんなこと私はよくわからなくて
でもパパが帰ってこないことは理解出来て
まだ生きていて暖かいパパの手を
おばあちゃんに握らされたのを覚えてる
今ではそれを感謝してる


そして私がその時のことで鮮明に覚えているのは
私の目の前で冷たくなっていくパパ
息を切らしながら病室に入ってくるママ


もうママが病院に着いた時には、パパの体は冷め切っていて




もう二度とパパがママの手を握ることは無かった




ママは何も言わなかった、言えなかった


きっと最後の電話に気づけなかった自分を責めて責め続けて、言葉が出なかったんだと思う


私も何も言わなかった、幼いながらに
ママの気持ちが何となく理解できた
空気感でどんな感情なのか分かったから



葬式でも泣かなかった、わたしも泣けなかった
悲しい気持ちを堪えた
ママの顔を見ていればなんとなく我慢出来る気がしていた。

葬式中ずっとママの顔を見つめた



でも私は何も起こらなかったかのようにいつも通り葬式中の手伝いをするママを見て
だんだん苦しくなってきて、大泣きしてしまった
苦しくて苦しくて。


ママを困らせたくなかったけど
涙は止まってくれなかった







ママは黙って私のことを抱きしめた
それでもママは泣かなかった
葬式が終わっても泣くことは無かった


きっとこの時ママの方が泣きたかったんだと思う


ママは感情を押し殺して私を抱きしめた


ママはあの時何を思ってたのかな
私が思いやれる子でいられたら
もっと2人で幸せでいられたのかな



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