今夜、桜の木の下
その日からだろうか


私はママの欲しいであろう言葉をあげ続けた


嫌いになった訳じゃない、大好きだから傷つけたくないし、失望して欲しくないし、傷つきたくもなかった


ママは私に対してどこか過保護になって、どんなに必死で気をつけても、幼い私はどうしても自分のやりたいようにやりたくなってしまう時があった、好奇心や興味は簡単には止められない


小学五年生の時、私は過保護なママを心配させまいと友達とあまり遊ぶ事がなかった、本当にたまに遊ぶくらいだった


その日は、同級生で仲のいい美奈《ミナ》の家で遊んだ、ちょうどその時美奈の家に新作のゲームがあったから、2人で夢中でやりこんだ



時間を忘れるくらい



私の門限は4時だった
気づけば時計の針は4時30分をさしていた、


「やばい、早く出ないと」


その日は美奈のママに門限を伝えていなかった


「え?どうしたの?」


この時美奈は私のママのことを知らなかったからキョトンとしていた
私は返事もせず急いで準備をした


急いで準備をして美奈の部屋から出ようとした時、ママが1階の玄関で美奈のママに注意する声が聞こえた





「どうしてこんな時間まで遊ばせるの?心配するでしょ?せめて連絡してくれない?常識でしょ?」



遅くなるかもって言ったのに.......
そんなにダメなの?.......



『心配』この言葉は私のスイッチになる
ママにお利口さんスイッチ


私は慌てて階段を降りて
ママのところに走った


「ごめんなさいママ、美奈ちゃんのママは悪くないの、私がわがまま言っちゃったのだからもう帰ろう?」



私は必死に笑顔でママの腕を持って揺らした
子供のように無邪気に


でもママは私の手を振り払った


「はぁーー、もう遊ぶの禁止
ごめんなさいね今日はうちの子と遊んでくれてありがとう、じゃあまた」


ママは明らかにわかる作り笑いで美奈のママに挨拶した


美奈のママは私の事をどこか心配そうに見つめて、またねと口パクで伝えてくれた
私が美奈にバイバイと言う時間もくれなかった


友達が1人また居なくなったと思った
いつもこうだ、何かしらで相手のママと揉めて
私は結局仲間外れにされる
私の話なんか聞いてくれない


無理やり私の手を引き私に靴をはかせた



「い、痛いよママ、そんなに引っ張らないで
許してごめんなさい」



ママは黙って私の手を強く引っぱって
友達のお家を出た
外に出ると空は暗くなりかけていて
いつも気づかなかった夕焼けの美しさを
私は皮肉にもこの瞬間に知った


嫌でも頭に浮かぶ


ママは私が美奈のことを美奈と呼んでいることを知らない
私が今どんなゲームを本当はしたいか
何をしたいかママは何も知らない
でもそれも全部私が悪い
言えばいいんだもんこれが好きだって
だから私が悪い





また私のせいだ…私のせい…




「ねえ待って、痛いよママ」



ママは1度も立ち止まらず歩き続けた





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