青の秘密を忘れない
「篠宮さん、もう帰れますか?」

青井君が私の顔を除き込むように尋ねてくる。
いつもよくある光景だから誰も気にしていない。
でも、私はそれがいつもと違う意味だと知っている。

「もうすぐ出られそう、かな」

「よかった。じゃあ、僕、お先に失礼しますね」

「駅のホームで待ってます」と限りなく小さい声で言って、彼は先に退社していった。

どんな話をするんだろう……。

やっぱりお酒の勢いでやってしまいました、って謝られるのかな。
…でもそんなテンションではなかった。

それとも、体目当て?
…それにしてもリスクが高すぎるし、何より彼はおそらくモテるタイプだ。

じゃあ…私のことが好きだから?

そんな自意識過剰な考えが浮かんできては、最初の考えに戻ってぐるぐると悩みながら、私も後を追うように退社した。
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