青の秘密を忘れない
突然朝まで一緒にいたいと思うと、滞在できる場所はかなり限られてくる。

「すみません、漫画喫茶なんかで」

「いや、意外とここキレイだし大丈夫。
でも、漫喫に泊まるとか若者みたいだなぁ」

若者、と口にしてババ臭かったかなと思って彼の顔を見る。

「そういう施設でもよかったんですけど。ちょっと、僕が困るので」

そう小声で言って彼は先に個室に入って、隣に座るようポンポンとクッションをたたいた。
私はその言葉の意味を理解して、青井君から目をそらしたまま隣に座った。

「手、握っていいですか」

私が頷くと、彼は私の左手に指を絡ませてくる。
ぐっと引っ張られて、彼と腕全体が密着するかたちになった。

「キス、していいですか」

「なんで、急に確認するの……」

「今までは衝動的にしちゃってたんですけど、篠宮さんがどこまでいいのか知りたくて。
こんな関係初めてだからどこまでがいいのか分からなくて……」

ああ、彼も戸惑っているんだ。

そう思ったら申し訳なくて、だけどそれ以上に愛しく思えた。
私だけじゃないと思ったら、鼓動も少し落ち着いてくる。

私は質問に答えるように、自分から青井君にキスをした。
そして、彼もそれに応じるように向こうから唇を重ねてきた。

「青井君、好きだよ」

「僕も、好きです」

外に聞こえないように相手の耳元で囁き合う。
青井君の手が私の頬からネックレスまで降りてきて、また深くキスをする。

漫喫でイチャイチャしてるなんて大学生みたいで恥ずかしいという気持ちと、そこら辺にありふれたカップルみたいで嬉しいという気持ちがごちゃ混ぜになって、それもキスを重ねるうちに考えたくなくなった。

そして、始発が出る時間までの間、
何度も何度もキスをして、何度も「好き」と言い合った。
意識を手離しては、目覚める度に繰り返した。
現実なのか夢なのか分からなくなる程。
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