青の秘密を忘れない
翌朝、同じ目覚ましの音で起きた私たちは顔を見合わせて笑った。

そして、出る直前に名残惜しそうに部屋を眺める私に、青井君は軽いキスをくれた。

また、観光名所を回って歩いた。
最後に有名な神社に立ち寄って参拝をする。

「青井君は何を願ったの?」
「言ったら叶わない気がするので秘密ですよ」
「私と一緒かなぁ?」
「秘密ですって」

そう言って青井君はくしゃっと笑った。
そして、カバンをゴソゴソして何かを二つ出して、一つを私の手のひらに乗せた。

綺麗な青い天然石の、お守り……?

「え、いつの間に買ったの?ありがとう!」

彼は、私の手のひらに置いたお守りをもう一方のものと入れ替えた。
きょとんとする私に、彼が笑いかけた。

「会う度に交換しましょう。同じ願いなら問題ないでしょ。
だから、会う時はこれ持って来てくださいね」

私たちの秘密が増えていく。
不道徳と言われても、今はどうしても嬉しい。
私はそれを財布のファスナーにつけた。

夕方になって、私たちは新幹線の改札に向かった。
寂しさから口数も少なくなってしまう。

「また近いうちに会えるといいですね」
「うん、また連絡するね」

彼は私の頭をポンと優しくたたいて、背を向けて歩き出す。
その姿を見つめていると、彼がふいに振り向いて手を振った。
私もそれに応えるように手を振り返した。

ただの遠距離恋愛なら、もっと自由に会えるのに。
私は彼が見えなくなってからも、しばらく動けなかった。
< 26 / 60 >

この作品をシェア

pagetop