青の秘密を忘れない
第16章 好きだから終わりにしよう
次に会えたのは、その三週間後だった。
そっちの方に用事あるので日中だけ、と青井君は言った。
泊まるともめるものね、と私は一人傷付いた気持ちになった。


「今日、ゆりえが近くまで遊びに来るから出掛けるね」
「分かった、気を付けてね」

あれからも正臣の態度はいつも通りだった。
「青子の気持ちが落ち着くの待つから」と言ったきり、その話題は出さなくなった。

正臣は優しい人だ。

好きでいられればよかったのに。

今、正臣の思いやりは鋭いナイフのように私の心を傷付け、錘のように重くすることしかなく、その事実も私を深く傷付けた。

……いや、真実を知って傷付くのは正臣だ。

私は正臣を勝手に悪者にしないよう、そこで考えるのをやめた。


青井君が青色の帽子を被っているのを見て嬉しくなった。

「お、篠宮さんも被ってる」

彼も同じことで笑って、それだけで幸せな気分になった。

百貨店で新しいコートが欲しいなんて話をしながら、しばらくウィンドウショッピングを楽しんだ。

普通のカップルみたいに。

「ちょっと僕、トイレ行ってきます」

百貨店のトイレの前のソファーに腰かけた私は、しばらくして急に肩をつかまれた。

「青子」

聞きなれた声に顔を上げると、正臣が立っていた。
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