イケメン富豪と華麗なる恋人契約【番外編】
「あ、コレ可愛い~」
「ホントだ。同棲記念にペアカップ買っちゃおうかなぁ」
「いいなぁ~。あ、おんなじ向日葵(ひまわり)柄のカトラリーセットもあるよ。こっちもペアだって」
「あー揃えたくなるっ」

日向子(ひなこ)は後ろから聞こえてくる女性ふたりの声に、思わず頬が緩んだ。
ここは都内にある某デパートの七階、望月陶器の専門ショップ。
ふたりの女性の前には、日向子の意見も取り入れてデザインしてもらった“向日葵シリーズ”が並んでいる。
花を取り入れたデザインで人気があるのは、一般的にいって桜や薔薇といった辺りだろうか。
上品さや華やかさでは敵わないが、その分、元気さや明るさ、パッと見のインパクトなら向日葵も負けてはいない。

(お祝い用の子供向けと、若いカップル向けにデザインしぼって正解だったかも。お値段も控えめだし、それでいてちゃんと望月ブランドだし)

低価格とはいえ、品質は望月のブランド名にふさわしいものだ。
それでいて低価格設定にしたのは……『それが社長のイメージですから』と秘書の優奈にはっきり言われてしまった。

(まあ、あの人に悪気はないのよねぇ。というか、あれはあれで褒めてる、ような?)

とにかく、春先にリリースされた“向日葵シリーズ”は、わずか三ヵ月で第二段が作られることが決定した。
ただ、第二段の制作に日向子が携わることはないが……。

「日向子、新しい食器は決まりましたか?」

ふいに名前を呼ばれ、ドキッとして振り返る。
そこにいたのは……満面に笑みを浮かべた日向子の旦那様、千尋(ちひろ)だった。
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