エリート御曹司と愛され束縛同居
「……そんな話だと思ったよ。まあ、その件はしっかり当事者に投げつけておいたから話し合え。完全な取り越し苦労だけどな……澪、先輩の本気をなめすぎだ。あの人がそんな中途半端な想いで一社員と付き合うわけないだろ?」

「……そんなのわからない」

「お前の恋人は誰だよ? 本心は本人にしかわからないんだ。いくら恋人同士でも口にしなきゃわからない出来事なんて無数にあるんだぞ。恋人は神様じゃないし、恋愛はドラマみたいにカッコ良く進まない。意味不明な遠慮を先輩が喜ぶと思うか? 本気になればなるほど恋愛なんてカッコ悪くてみっともなくて、情けないもんだよ」

言葉が痛いほど真っ直ぐ胸に刺さる。

返事をしようと口を開いたその時、静かなラウンジにはおよそ似つかわしくない騒々しい足音が響き、向かいに座る幼馴染みが小さく肩を竦めて立ち上がった。


「やっと来たかな? 澪、先輩の凄まじい本気をちゃんと理解しろよ?」

ニッと右口角を上げた途端、バンッとドアがノックもなく開け放たれた。


「澪!」


焦りを含んだ声で私の名を呼んだのはこの場にいるはずのない、遥さんだった。

「は、遥、さん? え、なんで?」


どうしてここにいるの? 帰ってくるのは明日の朝でしょう?


意味がわからず、慌てて立ち上がり、ふたりの男性を交互に見つめる。

「それは俺の台詞だ。なんで大事な話をきちんとしない? 電話だってまったくかけてこないし、俺がどんな思いでいたと思う?」
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