エリート御曹司と愛され束縛同居
綺麗すぎる面立ちに恐ろしいくらいの不機嫌さを貼りつけた遥さんが私に近づこうと手を伸ばすと、圭太がすっと前に立ちはだかった。

「……圭太、なんの真似だ?」

「俺の大事な幼馴染みなんですけど、本当に任せて大丈夫ですか? 無理なら俺がこのまま連れ帰って全力で幸せにしますが」

「ちょっと、圭太! なにを言ってるの?」

慌ててスーツの腕を引っ張ると、振り返ってしれっと言い放つ。

「本気。俺たちに今、恋愛感情はないけどきっとうまくいくよ。幸せになれない相手を選ぶよりわかり合って共に生きていける相手を選択したほうがいいだろ? 俺なら確実に澪を幸せにできる」

「……絶対に渡さない。俺のものだ」

背筋が凍りつきそうなくらい凄みのある声で遥さんが言う。

端正な面立ちには静かな怒りさえ浮かんでいる。

「こんなに追いつめて、澪の抱える重石に気づかなかったのに? 今回は俺が間に合ったからよかったですが、万が一の場合どうするつもりだったんです? 次にこんな事態が起きたらどうするつもりですか? 責任をとれますか?」

「それでも手離す気はない。今回の件は完全に俺の失態だ。もうこんな目には絶対にあわせない。俺の持てる力全てで守る……俺には澪がお前より必要だ」

冷静な口調で物騒な意見を交わすふたりにどう反応していいかわからない。

ただ、この心優しい幼馴染みは私のために演技をしてくれているのだろうとわかる。

本気で結婚する気なんてないはずだ。

なにより私は遥さん以外の人と将来を歩みたいとはもう思えない。

唯一無二の人に出会ってしまったから。
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