エリート御曹司と愛され束縛同居
マンションに着き、タクシーを降りた後も手は離されないままエントランスを抜け、エレベーターに乗り込む。

最上階に到着し、玄関ドアを開けると、焦れたように靴を脱ぎ捨てそのまま部屋を突っ切り、リビングに私を引っ張っていく。


「あの、遥さん」

奇妙な沈黙に耐えかねて尋ねると、振り向きざまに強く抱きしめられた。

「……怒ってないが、不愉快なんだ」

低い溜め息混じりに吐き出された声に心が軋む。

確認したかった出来事なのに実際に言われると胸が痛い。

「ご、ごめんなさい。兄が勝手な意見を言って……付き合ってからの時間も短いし、そう考えるのも当然……」

俯いてギュッと目を瞑ると、大きな手が私の両腕をつかんで自身の胸元に引き寄せた。

「違う! 俺はその話をお前から聞きたかったのに、なんで圭太に言われなきゃいけないんだ……答えなんて最初から決まってる、澪との将来を迷うわけない」

「え……?」

「……澪の苦悩に気づけなかった俺自身に一番腹が立つ。ご家族に真っ先にご挨拶に伺うべきだったのに俺の不甲斐なさで辛い思いをさせて泣かせてしまった……ごめん、澪。お前がひとりで抱え込む必要はないよ。ふたりの未来だろ?」

「それ、って……」

唇が震えて言葉にならない。

胸の中に熱い気持ちがこみ上げて視界が滲んでくる。
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